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POPPOの撮影隊 思い出話

1980年代から90年代にかけて、映画やテレビドラマの仕事をしていました。記憶が怪しくなる前に、思い出話として、書きつづっておくことにしました。

ドン松五郎の大冒険 その1

井上ひさし原作の映画「ドン松五郎の生活」の続編である。

「ドン松五郎の生活」は、犬は、実は人間の言葉を完全に理解していたという設定の元、それを知ってしまった人間達が様々な騒動を起こすという、西村知美が主演し、そこそこ売れた映画なのである。

さて、続編。

キャストは

立花理佐
石黒賢
千秋実
城戸真亜子
石立鉄男
沖田浩之
寺田農
阿藤海
清水由貴子
ケーシー高峰
西川のりお
吉幾三

立花理沙は、1986年、第1回ロッテCMアイドルは君だ!でグランプリ獲得し、その年の新人賞を総なめしたアイドルなのである。

その兄役に石黒賢、おじいちゃん役が、千秋実である。
千秋実さんは、黒澤映画「七人の侍」「隠し砦の三悪人」にも出演した、大ベテランなのである。

物語は・・・
千秋実演じるところのおじいちゃんが所有する「子供ランド」のようなところに、温泉がわいて出たことから、悪徳開発業者の親子、石立鉄男、沖田浩之がそこを手に入れようとするのを、ドン松五郎とその子供である「ジュニア」、そして犬たちが阻止するというお話しである。

実は、この犬たちのトレーナーをしていたのが、「南極物語」「ハチ公物語」前作「ドン松五郎の生活」などでもドックトレーナーを務めた宮忠臣さんなのである。



撮影は、たしか、オープニングのタイトルバックから始まったと思う。


北関東のとある山である。
前日、麓の宿に宿泊したスタッフは、一路山奥へ・・・・

実に、このとき、僕の担いでいた荷物は。
主役である「ドン松五郎」の子供役の「ジュニア」の入ったゲージなのである。

山道は、どんどん険しさを増し、手をつかなくては登れない程の急斜面になってきた。

「う、動くでない!!!」

背中のジュニアは、見慣れぬ風景にゲージの中でうろつくのである。
バランスが、あちこち動いて危ないこときわまりない。

先行するスタッフから

「落石!注意!」と声が飛ぶ。

おいおい、ヘルメット、必要だったんじゃないか???

歩くこと2時間???
目的地到着である。

そこは、そそり立つ岩山と、岩の柱があった。
荷運びをお願いした地元の人ですら、ここまで上がったのは初めてという人がいる。

岩には、山好きが登ったあとと思われるハーケン。

そこで、美術のTさんの登場である。

レンジャー部隊もかくやという装備を身につけ、ロープの束を肩に、岩の柱を登り始める。

そして、撮影シーンのコンテは、

岩山のてっぺんに、ドン松五郎 親子が居る。
空に向かって、遠吠えをする。
クレジット
「ドン松五郎の大冒険」

という感じである。


そう、犬もロープをかけられ、そこに引き上げられたのである。


問題は、遠吠えをしてくれるかどうか・・・

スタッフ一同、ドックトレーナー宮さんの指示の元、犬の視界から身を隠し、息を潜める。

カメラは、離れた岩場から、岩のてっぺんにいる犬を狙っている。

宮さんが、様子を見計らって、トラメガ(手に持つ拡声器)内蔵のサイレンを鳴らしたのである。

すると・・・・

なんと、見事にドン松五郎は、奥深い山並みと空を背景に、岩の上で遠吠えを始めたのである。

さすが、名ドックトレーナー!

おみごと!!

つづく
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ドン松五郎の大冒険 その2

オープニングシーンの撮影である。

山菜採りに出かけた兄妹(石黒賢、立花理沙)が、山菜採りに出かけた山で、急変した天候で嵐になり、崖から滑り落ちた妹を、ドン松五郎親子が助けるというシーンである。

撮影現場は、某林道の、実際に土砂崩れが起きた跡の山腹である。

嵐となると、特機部の登場である。

特機とは、「撮影効果」のことで、普段から、カメラをレールを敷いた台車で、移動したり、クレーンに乗せたりして、カメラアングルの変化に効果を出す仕事である。

しかし、その一方で、「雨降らし」「風おこし」も特機の仕事である。


今回は、下の川からポンプで揚水し、雨を降らすことになった。

風は、「今度のは、ムスタングの100馬力のエンジン載せてるからな。」という、大型扇風機である。


実際、土砂崩れが起きたところに、こんなに水をまいて大丈夫なのだろうか?という、不安を抱えつつも、撮影は行われた。

donmatu01.jpg

スタッフは、カッパを着ているが、役者さんは大変である。
泥だらけのびしょびしょ。

さて、いよいよ、大型扇風機の出番である。

ところが・・・
動かないのである。

「まあ、ポンコツ車のエンジンを改造したやつだからな・・・」・・・オイオイ

引きの絵(遠くから見た風景)は、翌日、まともな大型扇風機を改めて持ってきて撮影である。

とりあえず、寄りの絵(役者のアップなど)を・・・

ここで、川のポンプの番をしていた僕に声が掛かる。

特機さんは、寄りの絵のために、ジェットファンを用意していたのだ。
ジェットファンとは、よく、マンホールの中の工事現場で、換気のために使ったりする両手で抱えられる程の強力ファンである。

と、言うわけで、僕は風屋さんをやることに。

撮影現場は、既にドロドロ。
重いファンを抱えて、何度転けたことか。

結局、僕もドロドロになったのであった。

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ドン松五郎の大冒険 その3

ロケ場所としては、相模湖ピクニックランドに、ログハウスを建て、その周りに木製遊具などを作って、主人公達が運営している「子供広場」?とした。

donmatu00.jpg

しかし、この映画の見所は、ドン松五郎を初めとする、犬たちの活躍なのである。

はっきりいって、脚本の段階で、はしゃぎすぎなのである。
あまりにも、荒唐無稽、奇想天外、そこまでやるかの世界なのである。

第一作目と比較して、興行成績が良くなかったのは、この辺りにあるのかもしれない。

しかし、犬たちはがんばった。
実にがんばった。

ある時は、ダンプカーを運転し、ある時は、逃走する悪役の乗ったヘリコプターをハンググライダーで追跡、攻撃するのである。

donmatu03.jpg

ヘリのシーンは、さすがに役者さんは、操縦できないので地上でローターを回した状態で、手持ちカメラで、さも飛んでいるように撮影するのである。

この撮影では、僕は、ある時は照明部、ある時はドックトレーナー助手?などなど。

そして、このとき、録音部さんを手伝うことになったのである。

飛んでいるヘリの音を間近で採りたい。

そんなのは、無理なのである。

と、言うわけで地上で、エンジン始動、ローター回転開始と、一連の音を採ることになった。
出来るだけ、飛んでいる時の音ということで、可能な限りエンジン回転をあげ、ローターもぶんまわしてもらうことにする。

録音マイクには風音を防ぐために、通称「マンモス」と呼ばれる毛皮のようなカバーをつける。
マイクは、超指向性のため(向けた方向の狭い範囲の音だけをひろう)、録音部さんの一人は、エンジンに向け、僕はローターに向けてヘリの胴体のすぐわきで、録音開始である。

エンジン始動!!
ジェットエンジンである。
ヒュ~~~~~~~ンという音と共に、エンジンの回転が上がって行く。

かっこいいではないか!!!
トップガンの映画のようだ!!

ヘリのパイロットさんが、「地上で、飛んでいるときみたいにローターを回したことはないんですけどね。」と、言っていたが・・・・

やがて、その理由がよく分かった。

ローターの回転上昇と共に、ヘリが振動を始めたのである。

頭上では、ローターがうなりを上げている。
地上では今にも暴れ出しそうに、ヘリのスキッド(足)が、激しくふるえている。

最後は、「もういいんじゃないかぁ???」という、恐怖と共に、録音技師がOKサインを出してくれるのを願っていたのである。

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ドン松五郎の大冒険 その4

さて、悪役がヘリで飛んでいるシーンは撮った。

問題は、ハンググライダーで飛ぶ、犬たちである。

悪者を追いかけて、最終的には川崎球場に着地するのである。
そう、球場を借りて撮影したのである。

donmatu05.jpg

しかし、犬たちにハンググライダーの操縦が出来るわけはないのである。

ハンググライダーに犬用のハーネスをつけ、犬たちはそこにくくりつけられ・・・

大型クレーンから降ろしたワイヤーで、つり上げられたのである。

動物映画は、往々にして撮影現場は動物虐待状態を免れないのである。

ドックトレーナーの宮さんによると、犬は目が良くない種類が多く、高所恐怖症であるという。
(僕だって、クレーンで吊られたら怖いよなぁ。)

可哀相に、神経性腸炎で下痢してしまった犬が居たことも事実である。

ヘリからの見た目は、ブルーバックによる合成映像であるが、この映画、ハンググライダーの操縦バーに足をかけているドン松五郎ごしに、地上が映っているシーンがある。

そう、ドン松五郎は、飛んだのである。

もちろん、操縦は出来ない。

ハンググライダーにドン松五郎の上半身越しに地上が映るようにカメラをセットし、インストラクターと一緒に飛んだのである。

最近、パラグライダーで飼い主と一緒に飛んでいる犬をテレビで見たような気がするが、おそらく、日本で最初に風を切って空を飛んだ犬は、ドン松五郎が最初であったに違いない。

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ドン松五郎の大冒険 その5

この映画で、圧巻とも言える場面は、ドン松五郎を助けるために駆けつける多数の犬たちの登場シーンである。

様々な犬たちが、走って集まってくるのである。
そう、一般公道を走るのである。

ところで・・・

何で、この作品ではこんなに写真があるのか?

機材車の運転、スタッフとしてのもろもろは、もちろんこなしていたのだが、この作品ではスチールカメラマンに勝手に押し掛けで弟子にしてもらうことにしたからである。

スチールカメラマンとは、撮影現場でチラシやポスター、パンフレットなどを作るための素材を撮影する人である。

このときに学んだことのおかげで、僕の写真の腕は確実に上がったと言っても過言ではない。

あるロケ先の宿での宴会での会話。

僕      「師匠!女の子の写真をきれいに撮るにはどうしたらいいのですか?????」
スチールカメラマン「そんなことは、簡単だぁ~~~~!」
既に、相当酔いが回っている。。。
「美人しか撮らないことだ!!!!」

その翌日。

川の中を水を蹴立てて、走ってくる犬たちのシーン。

二日酔いの師匠は、つらそうである。

「お前撮れ!!!」と、いきなりカメラを渡され・・・・

パンフレットに使われていた、あの写真は、僕が撮った物に間違いないと思うのだが・・・

話がそれたが、犬が走ってくるシーンである。

donmatu04.jpg

犬が一斉に走ってくると言うことは、一斉に放す必要があるのだ。
と、言うわけで写真のような大きな囲いを作って、そこに犬を押し込み、競馬のゲートよろしく解き放つのである。

これが、山の中の一本道なら良い。

しかし・・・

これを、都会でやりたいという話になった。

場所は新宿。

現在、都庁が建っているところから、新宿駅の地下ロータリーに向かう道である。

一般公道で撮影を行う時は、管轄警察署に、「道路使用許可証」の交付を申請しなくてはいけない。

「新宿で、犬を100匹放します!」

そんなモン、道路使用許可が下りるわけがないのである。

ゲリラ撮影である。

100匹の犬をパネルトラックの荷台に押し込み、一斉にドックトレーナー達の呼び声で走ってこさせるのである。

このとき、制作部の間で、警官が来た場合、「体を張って止める係」、「現場責任者として手錠をかけられ連行される係」があらかじめ、決められていたことは言うまでもない。

さて、一発勝負の本番。

撮ったら、逃げる!!!
これが、至上命令である。

僕はもちろん、照明部さん、美術さん、衣装さんに、メイクさんまで、手に手に片方をわっかにしたロープを4本も5本も持って待ちかまえる。

もちろん、訓練された犬である。
訓練された犬というと、警察犬とかそう言うタイプの犬である。

つまり・・・・
シェパードとか、ドーベルマンとか、でかいのである。

訓練されていると言うことは、分かっているのである。
しかし、狭いトラックの荷台にめいっぱいに押し込まれていたため、犬も興奮状態なのである。

大型犬が100匹、自分に向かって走ってくるのである。
以前行われた、山間でのロケのとき、とあるドックトレーナーが、「ちょっと噛まれた。」と腕に包帯をしていたことも頭をよぎる。
はっきり言って、犬好きの僕でも怖いのである。

だが、事故もなく、警察が来る前に、風のように、ロケ隊は新宿の町から消え去ったのであった。

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